ピラティスは、ただ身体を動かす運動ではありません。
呼吸、姿勢、重心、体幹の安定。
わずかな身体のズレが、フォームの質を大きく左右します。
しかし実際には、
- 「正しく動けているか分からない」
- 「動画を真似しても感覚が掴めない」
- 「身体の軸が安定しているのか判断できない」
と感じる方も少なくありません。
そこで私たちは、AIを活用して“身体の使い方”そのものを解析する、ピラティス向けモーション解析システムの研究開発を進めています。
ピラティスの教科書をAIに学習
本研究では、ピラティスの専門教科書やインストラクター監修データをもとに、AIが“理想的な姿勢”を学習する仕組みの開発も進めています。
例えば、
- 背骨が自然なS字を保てているか
- 骨盤がニュートラルポジションにあるか
- 肩が上がりすぎていないか
- 呼吸時に胸郭が適切に動いているか
など、ピラティス特有の姿勢評価基準をAIに取り込みます。
これにより、単なる「動きの検出」ではなく、
「そのフォームがピラティスとして適切かどうか」
まで判断できるシステムを目指しています。
また、エクササイズごとに重要となる身体の使い方をAIが理解することで、初心者でもフォームのポイントを学びやすくなります。

AIが“姿勢の意味”まで解説
将来的には、AIが姿勢を分析するだけでなく、「なぜその姿勢が重要なのか」を説明する機能も検討しています。
例えば、
- 骨盤が後傾すると腹部の安定性が低下しやすい
- 肩がすくむと首周辺へ負荷が集中しやすい
- 体幹が崩れると呼吸効率が低下しやすい
といった身体メカニズムを、分かりやすく可視化します。
単なる採点型AIではなく、身体理解をサポートする“学習型フィットネスAI”を目指しています。
困りごとに合わせたポーズ提案
本システムでは、ユーザーの姿勢分析結果や身体の特徴から、適切なピラティスポーズを提案する機能の研究も進めています。
例えば、
- 猫背傾向 → 胸椎伸展を促すエクササイズ
- 反り腰傾向 → 骨盤安定を意識した体幹トレーニング
- 左右バランスの偏り → 片側安定性を高める動作
- 肩こり傾向 → 呼吸と肩甲骨可動域を改善するポーズ
など、身体状態に応じてトレーニングを最適化します。
従来はインストラクターの経験に依存していた部分を、AIが補助することで、より個別性の高いレッスン環境を実現します。

カメラだけで身体の動きを解析
こうした個別提案を実現するために、本システムではAIによる「全身骨格推定技術」を活用しています。
スマートフォンやPCカメラで撮影した映像から、AIが身体の特徴点をリアルタイムで検出します。
- 首
- 肩
- 背骨
- 骨盤
- 股関節
- 膝
- 足首
などの位置情報をもとに、身体全体の動きを解析します。
専用スーツやセンサーを装着する必要はなく、日常的な環境でも利用できることが特徴です。
画像から骨格推定とポーズ認識
AIの中核となるのが、「骨格推定」と「ポーズ認識」の技術です。
カメラ映像から人体の関節位置を推定し、
- 頭部位置
- 肩の角度
- 背骨ライン
- 骨盤の傾き
- 股関節の可動域
などを数値化します。
さらに、過去の学習データと照合することで、
- ロールアップ
- プランク
- ブリッジ
- スワン
- ハンドレッド
といったピラティス特有の動作をAIが自動認識できるようになります。
これにより、
- 正しいポーズが維持できているか
- 可動域が不足していないか
- 無理な代償動作が発生していないか
をリアルタイムで解析できます。 今後は、AIモデルを高度・詳細化し、より細かな身体制御やインナーマッスルの使い方推定にも取り組んでいきます。

“見えない動き”をデータ化
ピラティスでは、外から見えにくい身体のコントロールが重要になります。
例えば、
- 骨盤が傾いていないか
- 体幹が安定しているか
- 左右の筋バランスに偏りがないか
- 呼吸に合わせて動作できているか
といったポイントです。
AI解析では、これらの動きを数値として可視化できます。
従来は感覚的だったフォーム確認を、客観的なデータとして把握できるようになります。
AIがフォームの変化を追跡
本システムでは、エクササイズ中の動作変化をフレーム単位で記録します。
例えば、
- エクササイズ開始時との姿勢比較
- 動作中の身体のブレ
- 左右バランスの変化
- 姿勢維持時間
などを継続的に解析できます。
これにより、
「どの瞬間にフォームが崩れるのか」
「どの動作が苦手なのか」
を視覚的に確認できます。
“なんとなくできている”ではなく、
“どこを改善すべきか”を理解できる環境を目指しています。
オンラインレッスンにも対応可能
近年はオンラインフィットネスや自宅トレーニングの需要が拡大しています。
一方で、
「インストラクターから細かな姿勢指導を受けにくい」
「自己流になってしまう」
という課題もあります。
AIによる姿勢解析を活用することで、オンライン環境でもフォーム確認や動作分析が可能になります。
将来的には、
- 姿勢の自動チェック
- リアルタイムアドバイス
- フォームスコア表示
- 個別トレーニング分析
などの機能も視野に入れています。
フィットネスを“感覚”から“科学”へ
ピラティスは、身体の深層部を意識する繊細なトレーニングです。
だからこそ、AIによる客観的な分析との相性が非常に良いと考えています。
経験や感覚だけに頼るのではなく、
- 身体の動きを記録し
- 変化を分析し
- 成長を可視化する
そんな新しいトレーニング体験を目指しています。
今後の展望
現在は、
- 姿勢推定精度の向上
- 処理速度の改善
- リアルタイムモーション解析
- AIによるフォーム評価
- スマートフォン最適化
- 個別姿勢データベース構築
- AIレコメンド機能の高度化
などを進めています。
将来的には、ピラティスだけでなく、
- リハビリ
- ヨガ
- スポーツトレーニング
- ダンス
- 健康管理
など、多様な領域への応用を目指しています。
AIが“身体理解”を変えていく
人の身体動作を解析する技術は、単なるフィットネス支援にとどまりません。
「自分の身体を客観的に理解する」
その新しい体験そのものに価値があると、私たちは考えています。
AIとモーション解析技術を通じて、
より効果的で、より楽しく、より続けやすい身体づくりの未来を研究開発していきます。
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